それがぼくの頭を埋め尽くしたのはもうずいぶんと昔のことで、その事実自体にも辟易しながらしかし抜け出せないでいる、思春期の悩み多き若者、なんて、柄にもないとはわかっているのだけれど。現実問題そこから一歩も動けないでいることだけは確かなのだから、まずそれを認めるべき、ではあるのだけれど。
「何考えてるの?」
突然、彼女はいつも突然現れる。ぼくは自分の頭の中身が覗かれていやしないかと、なぜこうも彼女のことを考えているときに限って目の前に現れるのだろうと、いつもそんなことを考える。必死でそれを皮膚の下に隠して、冷静な表情を作り上げて受け答える。
「別に、何も」
彼女が、嘲笑に歪んだ表情を見せる。
「女の子、当たり?」
ぼくは、きっと苦笑いだろう。
「当たり。きみのこと」
些細な反撃を試み、彼女をひとまず退かせることには成功するのだけれど、それが何になるわけでもないことはわかっていて、それはずっとそう繰り返してきたからなのだけれど。けれど、今日は一味違う手応えがあったようにも感じた。彼女の口が、声を出さずに動く。
「なんて?」
聞き取れないのではなくて、彼女は声にしなかった。
「さあ、好きな台詞当てはめたら?」