Archives

afraid

「怖いなぁ」

わたしの小さなつぶやきを彼は聞き逃さず、何が怖いの、と優しい声をかけて頭を撫でる。わたしは甘んじてそれを受け入れ、彼の胸に頭を寄せながら、こうして無意識に依存してしまうことや、それをあなたに知られてしまうことが怖いのよ、と、心の中でだけつぶやく。

命の終わるときに誰と一緒にいるのか、誰とも一緒にいないのか、それは今のわたしに知ることはできないけれど、今わたしの心を読み取れずに頭を撫でている彼とそうなりたいと、思ってはいない。

「もし明日死ぬことになったら、どうする?」

うーん、とうなってから、彼が途切れ途切れに答える。

「わからないよ、そんなこと急に言われても。でももし、君が嫌だって言わないんだったら、今みたいにこうして頭を撫でてるのも悪くない」

それ、なのよ。あなたは、人間が他人という存在なしには生きられないことや、自分では気付かないほどに心を委ねてしまうことや、結局最期の最後にはやっぱり独りになってしまうことを、知らないのだ。だから素敵な言葉に溺れたり、おとぎ話に酔うことができるのだ。

"Don't be afraid. god bless you."

何かの台詞が頭をよぎる。

『例えば日差しの暖かな小径を愛する人と二人で歩くとき、あなたの頭から病や死の一切はその姿を消すだろうか? もしそうだとしたら、それは幸せなことだろうか? 死ぬことを恐れずに、生きていられるだろうか?』