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say goodbye

「最後に、君にお別れを言いたくて」

嘘だ。お別れのために君に会うなんて、嘘だ。僕はそんなに割り切れた人間じゃない。別れの挨拶を口実に君に会えば、奇跡が起きるんじゃないかと、そんなことを期待しているのだろう。あるいは君が僕に未練を感じるんじゃないかと、そんな浅ましいことを。

「元気で、幸せにね」

僕は未練がましい男だ。本当に最後の最後の瞬間まで、逆転の一打を期待している。それも、僕自身がどうにか努力して到達するような、そんな目標じゃない。あくまで、奇跡が歩いてくるのを待っている。浅ましい僕の別れの言葉を、黙って聞く彼女。

「さようなら」

僕は、君に、また会うだろう。

dreamer

「夢だったらよかったのにね」 「何が?」 「全部よ。あなたのことも、私のことも」

happinessless

「幸せって、どういうことかわかる?」 「さあ、よくわからないわ」 「そうか、僕も同じだ」

punishment

「だって、私とあなた、多分うまくいかないよ」

彼女は微笑みながら、確実な死刑宣告を下した。それは彼女にとって、あるいはその周りに散在するごくありふれた連中にとって、何気のない冗談であったはずだ。僕に向けて性格の不一致を冗談めかして告げる、ただそれだけのことであったのだ。けれどそれは確実な、僕にとって何よりも耐え難い、強烈で悲劇的な機会に与えられた、死刑宣告であったのだ。

「ね。だから」

僕は冗談でそんなことを口にした、過去の自分を殴り殺してやりたい気分になり、未来の自分に殴り殺して欲しい心境になる。やがて僕は象徴的な意味での自殺を図り、その心を殺した後に生まれ変わるだろう。

彼女の死刑宣告は実施を待つでもなく、僕を殺しただろう。

pass

「ようやく君の魅力に気付いたんだ。やり直さないか、俺たち」 「残念だわ、私と入れ違いになってしまっただなんて」

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